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クルマの運転で遠くに視点を置くということはきわめて大切なポイントだ。
とくに老人のドライバーは視力の低下と同時に、視野も狭くなっており、自然と視点が近くに向きがちである。
この視点を、意識的にもうすこし遠くへ修正してやったほうがいい。
たとえば狭い山道を走るとき、気がつくと、うんと手前のセンターラインばかり見ていることがある。
こういうときはきわめて危険だ。
遠方の状況を把握しないで、近くのものばかりで判断するのは霧のなかの運転と同じだ。
それでは突然きついコーナーが現れて、コースアウトということになりかねない。
ふつうクルマというものは秒速一0メートル以上のスピードで走っているのだから、少なくとも二00メートル先ぐらいを把握しながら走っていないと、次に起きる事態に対処できない。
とくに高速道路では視点を遠くに置くことが不可欠だ。
視力検査の最低基準、0・七というのは少なくとも一キロ先は見えるということである。
ま、一キロ先を見ろというのは、ちょっと遠すぎると思うが、高速道路だと少なくとも五00メートル先を見ていないと、ブレーキングにしろ、ハンドル操作にしろ、あらゆるアクションが遅れてしまう。
しかし、長い時間高速道路を走っていると、この距離感が狂ってきて、五00メートルなんだか、二00メートルなんだか、だんだんわからなくなってくる。
そこで高速道路にはところどころ、五0メートルおきに標示があって、そこでドライバーに距離を教えるようにしてある。
私は、この区間を通るときは、かならずその標示を見て距離感を調整するようにしている。
もうひとつ、視点をまめに移して、自分の後ろ、斜め後ろの状況を知っておくことも大事だ。
一点を凝視して、そのまま動かないというのはきわめて危険である。
私はふつう、前方七、後方三の割合で、ルームミラー、サイドミラーをチェックしながら走っている。
さすがに混み合った都会の道路では、誰しもバックミラーはちょくちょく見るだろうが、とくに平坦な気持ちのいい田舎道がつづくような場合、バックミラーのチェックは忘れがちだ。
こういうときに思いがけないことが起きるのである。
バックミラーをまめに見ていると、追尾してくるパトカーにスピード違反で捕まるということもない。
パトカーにスピード違反で捕まるようなドライバーは、ボ1ッとして背後を見ツイてないのではなく、注意力散漫なのだ。
こういうドライバーはスことによると自分は重大な事故を引き起こす可能性があると自覚していないからである。
ピード違反だけでなく、ておいたほうがいい。
メーターはもちろん、私はまたバックミラーだけでなく、定期的にメーター類も見る。
スピードメーター、タコガソリンがどのくらい残っているか、水温はどのくらいかをちょくちよくチェックしている。
人間というのはよくできたもので、視線を前に置きながらもこうしてメーターを見たりバックミラーを見たりしていると、そのことでいろいろなことを考えた運転の基礎知識をおさらいしておこうりして眠くならないものである。
なんにせよ、視点をときどき変えるということが大事なのだ。
じーっと一点を凝視したままのドライバーは、事故を起こしゃすいタイプといえる。
老人ドライバーのなかにはこの一点凝視型の人が少なくない。
こいつを自分はキョロキョロせず、落ちついているのだと勘違いするなかれ。
キョロキョロしているのは、周囲に注意を払っているからこそである。
自分の近くだけを一点凝視したままの唯我独尊ジジイドライバーはきわめて危険と自覚すべし。
ミラーに死角があることを忘れてはいけないルームミラーとサイドミラーではすこし使い方が違う。
ルームミラーは後ろのクルマとの距離を測るために見る。
そのため鏡面が平板になっている。
なかには球面状に曲率のついたワイドミラーを使っているドライバーがいるが、これはあまり感心しない。
距離感が狂う。
後ろからくるクルマが実際より遠くに見えてしまうのである。
それにたいして左右のサイドミラーは、ほかのクルマの存在を確認するためのもので、広範囲を映し出すようになっており、比較的曲率が高い。
そのため、こちらのほうの距離感はあまりアテにならない。
Mあたりは、このサイドミラーに、外側に向かうにしたがって曲率の高くなるミラーを使っている。
こいつは慣れるととてもいいのだが、これがどうも苦手という人もいる。
実際、二玄社の編集局長、大川悠氏など、自分のMのサイドミラーをわざわざふつうの曲率のものに変えて乗っていた。
距離を測るにはあくまでルームミラーを基準にしたほうがいい。
ルームミラーでの距離の測り方はひとえに慣れなのだが、後ろのクルマとの車間距離は最低でもそのクルマのナンバーが見えるぐらいが限度である。
これで一01一五メートルぐらいだ。
これ以上、四メートル以内に近づかれると、もう後続車のナンバーは見えない。
さらにその運転者しか映っていない場合。
こいつはきわめて危険だ。
もはや車間距離は二、三メートルぐらいしかない。
とくに高速道路でそんなにくっついてくるのは常軌を逸している。
さっさとよけることだ。
注意しなければならないのはサイドミラー、ルームミラーのいずれも死角があることだ。
自分のクルマの斜め後ろのごく近くは右も左も、ほとんど見えない。
ちょうどCピラー(いちばん後ろの柱)の陰になって、クルマがいてもその存在にまったく気がつかないことがある。
だからほんとうなら、車線変更したり本線に合流するときは首をひねって斜め後ろを直接、肉眼で確認するのが理想的である。
ま、歳をとるとそれが億劫になるのが困りものだ。
そこでこういうときは、レーン上でほんのすこしクルマの位置を変えてやるといい。
するとミラーにいままで映らなかったクルマの一部が映る。
そうなったらもう車線変更はせず、振り返ったりミラーを深くのぞき込んでよくよく確認することだ。
ときにウィンカーを出さないまま、いきなりレーンチエンジをするドライバーがいる。
なんて怖い人かと思うが、おそらくああいう人はミラーなどまったく見ていないのであろう。
注意力散漫というか、想像力欠知というか、こういう人にかぎってドキンとして取り返しのつかないことになる。
とにかくミラーはしっかり確認すること。
そしてウインカーはかならず出すこと。
曲がりますよという意思表示は、ウィンカ1以外ではできないのだから。
本来、高速道路で使うのはほとんど右側のサイドミラー、運転席側のミラーである。
実際、ひと昔前のヨーロッパ車はサイドミラーが運転席側にしかついていなかった。
反対側はほとんど使わないからである。
それが日本マーケットからの要求で、だんだん両方につくようになったのだ。
いずれにせよこのサイドミラーは大きなほうが見やすいのは確かだ。
とくにミニヴァンタイプのクルマはミラーが縦に長く、かつ大きくていい。
最近では、Hのキャパなど、小さなボディにしては大きなサイドミラーがとてもよく見えてよかった。
かつて国産車はなべてフェンダーミラーであったが、昨今の国産車はおおかたサイドミラーとなった。
こいつはおもにユーザーがサイドミラーをカッコいいと思うのがその理由だろう。
しかし、サイドミラーはとくに左側を見るときに、視線を大きく移動してやらねばならないのが難だ。
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